例えば秘密のノートに記すように。

cancion-de-la-abeja(みつばちのささやき)          

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ふわふわ


 春きゃべつとは記されていなかったけれど、結構やわらかな葉に感じた。包丁を入れるとさくっと入る。極端に低い握力の自分でも、千切りが容易にできるきゃべつだった。
 細く細く切り積みあげたきゃべつは見るからにふわふわで、塩だけかけて食べても頬がゆるむ。此の上で昼寝してもいいな、なんて。
 天気予報は雪。今日も泣いてしまったけれどまあいいやなんて想っては雪を待つ。夜になっても其の気配はなく、ふわふわを想い描いて眠る。

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手間をかけない日


 パイ生地に薄く切った林檎をのせバターを落とす。草取りはミニシャベルで。
 今日は手間をかけない。昼食も野菜炒めと即席の味噌汁で済ませた。珈琲もインスタントコーヒー。選挙もすぐそこでできる期日前投票。

 蓮の花托の乾燥花の茎が折れてしまった。頭を削った爪楊枝で茎と茎を繋げる。これだけは手間をかけ慎重に。
 紅花もうさぎの尾もサンキライも薔薇の実の乾燥花も可愛いけれど、壱番のお気に入りは蓮の花托かもしれないと想った傍から、眼に入った赤とうがらしを褒める。
 ティーカップに詰めた赤とうがらしはまるで花のよう。いつつむっつ抜けているのは、辛い物を好む彼が抜いたから。

 もう少し暖かくなったら土もきれいにしよう、とミニシャベルで草取りをした後で撫でる。壱度ではとても無理で、ときどき手間をかけない日を作る。
 草取りをする間にトースターで焼いたパイは、心配しなくてもちゃんと林檎のパイの味がした。

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花盗人


 土手の道を走り、遠くに見える橋のところまで行ってみる。橋の上り口は見えない。長い長い橋だと見上げた後来た道を戻る。
 自転車籠には少しばかりの菜の花。菜の花の花影には彼の姿、彼の声。花びらを散らさないように走る。けれど、ゆっくりでなく全速力で。

 水仙を活けた花瓶に菜の花を足す。随分ときいろの束になってしまった。きいろが苦手なあたしの横で、素敵と言う彼の声。
 入りきらなかった菜の花は小振りの花瓶に活け、父の傍に。これから暖かくなっていくから、と言う父に、明日から雪の予報が出ているよと花盗人はつぶやいた。

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卵を食べる


 赤い卵。そう言って殻が赤くも茶色にも見える卵を籠に入れる。

 フライパンに拡がったのはバターの匂い。溶かした卵を流しこみ菜箸で手早く集めたら火を落とし少し崩して皿に盛る。
 茹で卵も出汁巻き卵も好きだけれど、いっとう好きなのはスクランブルエッグかオムレツ。
 どちらかと云うと硬い食感が好みなのに、卵はふわふわでとろとろしたものを食べたい。
 壱年も弐年も目玉焼きを食べていないことを想うけれど、また卵を手にした途端に忘れてしまうのだろう。

 祖母の家にあった小さな鶏小屋を思い出し、たまには生卵かけご飯を食べてみようかなどと想ったり。
 卵を食べる日は割と元気な日。バスとどちらにしようか迷ったけれど、自転車にまたがる。

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黄水仙、白水仙


 白梅も蠟梅も咲き続けてはいるが、半分ほど花を落とし淋しくなってきた。まとめて背の高い花瓶に活け、父の傍に置く。新たに買ってきたのはかすみ草と黄と白の水仙の花束。其れを背の低い花瓶に活け、彼に、どう?、と言い傍に置く。
 数日前買ってきた線香も水仙の香。
 彼と遊びに行った水車のある公園に咲いていたいた水仙を思い出す。
 明日は立春。移ろう陽射し。冬の終わりの匂いが部屋に拡がっている。

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