例えば秘密のノートに記すように。

cancion-de-la-abeja(みつばちのささやき)          

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365日


 今日で365日ひとりで過ごしたとも言えれば、あれからも一緒に過ごしてきたとも言える。今日まで365日感心しない暮らしをしてしまったとも言えれば、ぎりぎりのところで暮らしになっているのはなかなかだとも言える。
 彼とこれからも暮らしていくと云うたぶん自分にしかわからない想いと、或の日××さんには生きていて欲しいと言われた言葉が、自分に絡みついている。均衡の悪い樹木に絡みついた蔦を想像する。蔦のお蔭で倒れずに済んでいる樹木を。あたしが其の樹木なら蔦をいとおしいと想う。蔦はあたしがいなくても生きていけるけれど、どうせなら蔦の意図しないところで蔦に花が咲くようにと願う。
 壱日のうち数時間は時が止まっている。そして、数時間は本当によく動いていて、自分で自分に泣けてくる。本人は想っていなかったのかもしれないけれど、あたしから見たら多感な時期に自身が想い描いた通りの生を彼は生きたと想う。其れを見てしまったら、自分もそうしたいと想うのは自然かもしれない。
 夢は?と訊かれ、生きる姿勢と応えていた自分。好きな言葉は?と訊かれれば、初期衝動、と。彼を想うと歩き始めた処へ戻っていくような感覚。
 枯れそうで枯れない竜胆が、今日もきれい。

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ピーチティー



 彼におはようと朝の挨拶をすれば途端に嫌な気持ちが消える。朝は彼のように生きようと云うことしか頭になく、昨日買った桃をひとつを半分にして食べ、皮と種を使ってピーチティーをこしらえる。
 あまい匂いに謎が解けたかのよう、自分には理解不能だったものの片付けがひと種類だけれどできた。

 午后、録画してあった映画を観る。「イングロリアス・バスターズ」。タランティーノ監督、脚本。機知と毒。えっ、て言うくらい面白かった。2009年の作品だけれど初めて観た。
 急遽上映を取りやめになった映画があったと先日知ったが、制作費と興行収入の問題だそうで、上映はないが配信はあるようなことが記事に書かれていた。できれば映画は映画館で観たい。

 ピーチティーにあたしの毒を吹き込む。喝采されるくらい素敵な皮肉になればいいと想い乍ら。

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故障中



 故障中とだけ記された張り紙の前で、あたしも故障中とだけ記された人間になった。

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匂いと記憶


 朝から暑い。今朝は珈琲でなく酸味のあるローズティーにした。
 洗濯物を干し終え、玖時丁度に家を出て水を汲みに食料量販店に向かう。給水サービスコーナーの前で首を傾げている人がいたかと想うと、廿分後今日は使えないのでと店員に言われる。
 帰り道、泣いている自分がいた。それで弱っていたことに気付く。

 毎日正常に自分を動かすには、玖分目辺りまで使い壱旦休み充電するのがいいのだろう。
 実家に帰ると母が、休んだら、お茶にしたら、と度々声を掛けてくる。そんなに休憩をとらなくてもと想っていたけれど、自分の方が時間の分配ができていなかったのかもしれない。

 帰ってから横になり眠ろうとするが眠れない。
 今日は父の誕生日だったなとぼんやり想う。
 自分に何があるかと言えば(自分だけの)記憶しかない。其処はメモリいっぱいまで使っていいと想う。
 此の数箇月の記憶と疲労の均衡が悪いように想えてきた。

 明日水汲みのついでに桃を買おう。ひとつは父に、ひとつは夫に。
 食べ終えたら皮と種は紅茶に入れよう。あまい匂いは人を元気にする。其の記憶が引き出され、蘇生でもするかのよう背筋を伸ばし椅子に座る自分を想像し眠りに落ちていった。

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ひねもすのたり


 反応できなくなっているだけで、感情はある。反応と感情がうまく繋がっているときは、笑ったり怒ったりもしている。
 他人の気持ちに影響されやすいとわかっているので、感情的になり他人とやりとりするのを嫌う傾向にあると想う。自分から辛かったことや悲しかったことを話すのが苦手になったのも、他人に愚痴を聞かされるのが辛くて嫌だったからだ。だいたい愚痴を言いたがる者に悲しかったことを話しても、自分なんてと言われ愚痴を聞かされることになる。

 年々人付き合いの数が減っている。
 自分が死んだら、孤独な人だったとでも言われるのだろうか。
 暮らしだけそこそこにできていたなら、それでいいかと想い始めている。

 起きて塵出しして洗濯して掃除して買い物に行ってご飯を食べて・・・。鳥の声、蝉の声、水音、風の音、草の匂い、・・・。
 (政治とか戦争とか、理不尽とか不平等とか、酷い話だと想うこととか納得いかないこととか、あるけれど、)時々彼に話し掛けてはひねもすのたり。

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