あと参秒だった。眼の前をバスが横切っていく。後ろから手を振るが、バスは走り去っていった。田舎の人が親切だなどと云う話はせいぜいあたしが拾代の頃の話なのだけれど、走り去っていくバスに或のときも或のときもと思い出しては悲しくなる。そして、未だ玄関の戸を閉めずに生活していたり、宅配の人が其れをわかっていて届け物を置いていったりする地域があると聞くと、泣きそうになってしまう。
母の家に着くと、クリーニングは終わっていた。昔は改装した後は埃だらけでと母は喜んでいるので、クリーニングもお願いし代金に含まれていることは黙っていた。
思い出したように母が、妹がこちらへ来ると言っていたと言うので、母が家主だと云うことも忘れ、気に入った(信頼を置いている)人しか家の中へは入れませんと言ってしまい母の顔を窺うと、大きく頷ていた。去年の今頃、何の連絡もなく約束を反故されたことを母も忘れていないのだと知る。そして夜になっても伯母が来ることなく連絡も入らなかった。
子供の頃から感じていたことを伏せるようにして生きてきたけれど、今は其れをだいじにさえしている。田舎だから、親戚だから、親だから、ともだちだから、教師だから、警官だから、・・・。なんて傲慢で、なんて愚かな言葉なんだろう、と。
