例えば秘密のノートに記すように。

cancion-de-la-abeja(みつばちのささやき)          

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ベンチとミルクティー


 火にかけた鍋。紅茶葉の色が牛乳に溶け出す。牛乳は牛乳で膜を張り、想わず頬がゆるむ。
 ミルクティーに抹茶味の菓子を添え、脚を投げ出してベンチに座る。

 卓と椅子を買うなら椅子のひとつはベンチになっているもの、と云うあたしの希望は叶えられ、大きな卓が欲しかった、と云う彼の希望は希望で叶えられ、胡桃の卓は台所の主となり、引っ越し後もあたしを包んでくれている。
 ひとりで座るには大き過ぎる卓。数の余る椅子。
 此れをこれから最大限に活かすにはどうしたらいいだろう。

 ベンチは切り離して使っても素敵、なんて想っては彼にどう?と語りかける。
 両手で持ったミルクティーのカップ。もし此れを欠いてしまったら乾燥花を飾ったりするだろう。
 つづく倖せ、なくなることないお気に入りのもの。
 外は寒く、風も強くなった。

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粉雪降りしきる


 早朝かすかな空気の違いに目覚める。
 はらはらと降る雪。粉雪だった。

 屋根に乗った雪を集めぎゅっと握る。うまくまるめることができない。指の隙間からこぼれ落ちていく雪。あっと言う間に手は冷たくなる。
 小さな雪だるまをこしらえ小皿に飾った頃、町に大雪警報が出た。道路も白くなり、屋根にどんどん積もっていく雪。けれど車が立ち往生するほど此の町に雪は降らない。
 窓を開け、美い、とつぶやいてはふわふわと飛び込んでくる雪と遊ぶ。

 すぐに春になるのに、壱度放った毛絲にさわる。そのもの、と記されたひつじの匂いがするような真っ白な毛絲。其れを形の崩れ始めた雪だるまの隣に並べる。

 此処にも其処にも、眼をつむってしまいそうなまでの白い色。白が発光している。

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ふわふわ


 春きゃべつとは記されていなかったけれど、結構やわらかな葉に感じた。包丁を入れるとさくっと入る。極端に低い握力の自分でも、千切りが容易にできるきゃべつだった。
 細く細く切り積みあげたきゃべつは見るからにふわふわで、塩だけかけて食べても頬がゆるむ。此の上で昼寝してもいいな、なんて。
 天気予報は雪。今日も泣いてしまったけれどまあいいやなんて想っては雪を待つ。夜になっても其の気配はなく、ふわふわを想い描いて眠る。

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手間をかけない日


 パイ生地に薄く切った林檎をのせバターを落とす。草取りはミニシャベルで。
 今日は手間をかけない。昼食も野菜炒めと即席の味噌汁で済ませた。珈琲もインスタントコーヒー。選挙もすぐそこでできる期日前投票。

 蓮の花托の乾燥花の茎が折れてしまった。頭を削った爪楊枝で茎と茎を繋げる。これだけは手間をかけ慎重に。
 紅花もうさぎの尾もサンキライも薔薇の実の乾燥花も可愛いけれど、壱番のお気に入りは蓮の花托かもしれないと想った傍から、眼に入った赤とうがらしを褒める。
 ティーカップに詰めた赤とうがらしはまるで花のよう。いつつむっつ抜けているのは、辛い物を好む彼が抜いたから。

 もう少し暖かくなったら土もきれいにしよう、とミニシャベルで草取りをした後で撫でる。壱度ではとても無理で、ときどき手間をかけない日を作る。
 草取りをする間にトースターで焼いたパイは、心配しなくてもちゃんと林檎のパイの味がした。

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花盗人


 土手の道を走り、遠くに見える橋のところまで行ってみる。橋の上り口は見えない。長い長い橋だと見上げた後来た道を戻る。
 自転車籠には少しばかりの菜の花。菜の花の花影には彼の姿、彼の声。花びらを散らさないように走る。けれど、ゆっくりでなく全速力で。

 水仙を活けた花瓶に菜の花を足す。随分ときいろの束になってしまった。きいろが苦手なあたしの横で、素敵と言う彼の声。
 入りきらなかった菜の花は小振りの花瓶に活け、父の傍に。これから暖かくなっていくから、と言う父に、明日から雪の予報が出ているよと花盗人はつぶやいた。

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