例えば秘密のノートに記すように。

cancion-de-la-abeja(みつばちのささやき)          

忍者ブログ

頁を戻る頁を捲る

つかいみち


 土間だった処を板張りにし洋室に改装したとき母が塞ぐよう希望した勝手口は、大工さんの強い勧めで残されたが、邪魔なものにしかならなかった。母とあたしとで弐度目の改装を決めたとき其の勝手口は塞いで貰い、見栄えも良くなり家具を置くにも悩むことはなくなった。そのとき弐階へ続く扉も無くしてしまえばよかったのかもしれない。見栄えが悪いわけでもなく特に邪魔になるものでもないが、真夏に風通しに開ける以外使ったことがない。
 扉に対し玖拾度の位置に台所へ続く扉があり手前に物は置けないが、其処が無駄に想えてしまい余っていたドアー用のフックを掛けてみた。みっつ横に並んで付いているフックに其々乾燥した玉蜀黍にサンキライのリースにアカシアの乾燥花を下げると、扉は無駄に想えるものでなくなった。
 フレームを購入し、HARRYの大きなポスターを飾ってもいいな。(アンディ・ウォーホルのポスターを飾るように。客間に。)

拍手

      郵便箱

頁を戻る頁を捲る

色や質感


 薪ストーブや石炭ストーブと言った古い型のストーブだったと想う。中央に持ち手の付いた窓があった。其のストーブに背を向けあたしは洗い物をしていた。夫と昼食を食べあとの皿をきれいにしていた。其のときのあたしは日本人でなく、韓国人だったもしれない。
 夢を見ていた。部屋は暗く時計の針が見えない。寒かったのだろう。綿毛布が躯から離れたところにあった。

 すぐにまた眠ってしまった記憶がある。目覚めると今度は部屋が明るくなっていた。其の間に見た夢をはっきり憶えていた。
 働いていた店には小さなステージがあった。其処に有名で自分が好きでもあるバンドがやってきたが、彼らは店の様子を見に来ただけとわかった。ボーカルの彼に呼ばれ、テーブルに向かい合い座りいろいろ質問されたが、彼に気に入られたらしく最後は食事を御馳走になりふたりで他愛ない話をした。テーブルはまるい形の木製のもので、食べていたのは白い皿に乗ったパスタだった。
 食べ終えて、お礼に壱杯お酒を御馳走したいとあたしが言うと、酒は他の店で飲むことになっているからと遠慮されたが、きみもおいでと誘ってくれた。彼に付いていった店では彼と離れて座った。ミュージシャンの音についての話を耳に入れながら、途中でうとうとしてしまったらしい。はっとなって顔をあげると彼以外の人たちは皆眠ってしまっていた。彼はあたしに気付くと、笑いながらおいでと手招きするので彼の隣りに腰掛けた。居酒屋にある足元が掘り炬燵のようになっている席だった。彼の傍にあったグラスは陸角形で大きな氷がみっつ入っていた。

 今も彼の癖のあるやわらかそうな髪は眼の中に残っている。
 落ち着いた夢をまた見るようになってから、夢で見る物の色や質感が戻ってきた。
 いつか夫と海に行く夢でも見られたら素敵だろう。

拍手

      郵便箱

頁を戻る頁を捲る

寒い


 重ね着しても躯は温まらず、固まった指先。幾度も繰り返す、寒い、と云うつぶやき。
 眠い。

拍手

      郵便箱

頁を戻る頁を捲る

櫻色


 丁度いいバスの時間がなく、かと言いタクシー往復壱回分の料金に悩みたくなく、此の間買った雨合羽を着ていつもよりずっと早めに家を出た。それでも病院に着いたのは約束の伍分遅れだった。

 病室を訪ねると、母の介護認定の調査は始まっていた。
 花を育てるのが好きだった母に花の寫眞を撮って面会の都度見せていることや、其れに対し反応がいいことを話すと、調査員さんは母に好きな花を尋ねた。薔薇か藤とでも応えるのかと想っていたら、春だったら櫻が好き、とにこりと笑い応えていた。
 事が終わり調査員さんに、嬉しそうな顔で笑いますね、可愛らしい、と言われ複雑な気持ちになる。

 拾代になるとロックスターを好きになり(革の服はまだ無理だったので)デニムやTシャツを好んだあたしに、ピンクのシャツワンピースを買ってきた母を思い出す。
 あたしの苦手な明るくはっきりした色を好む彼女。シャツワンピースのピンクはやわらかなピンクだったので嫌がらずに着ていたけれど、あれは櫻色でもあったなと振り返る。

 雨合羽の上着は赤みの強いくすんだピンク。きれいに雨粒を弾いていた。

拍手

      郵便箱

頁を戻る頁を捲る

体温


 昨夏は体温が上がることもなく冬も低くなることはなかったので、安定したのだと想っていた。今日も丗度に達した気温になったが、暑さを感じるだけでなく頭がぼんやりし頭痛も覚え、頬が熱くなってきたところでいつものがやってきたと判った。
 幸い明日は雨で気温廿度ほどの予報が出ている。今日より拾度も低くなればひと晩で体温も下がるかもしれない。
 布団を敷き水枕を当て寝転がると気持ちよかったのか、陽が高いと云うのに眠ってしまっていた。

拍手

      郵便箱