赫々と
2024, Mar 03
割と大きな粒の苺。うんと小粒のトマト。手提げ袋から赤が覗く。
遊歩道の角のゆきやなぎがちらほらと花をつけた。
季節は移ろうとしている。
ゆきやなぎやレンギョウをみつけては、此れ何?と毎春尋ねてくる彼に、曖昧な笑顔で応えていたあたしを、彼はちゃんと見ていてくれただろうか。
出逢ったのも、ふたりで黙ったまま道を歩いたのも、動物園に行こうと誘われたのも、想えばみな春だった。
苺とトマトのきれいな赤に、ふとそんなことを思い出す。
最後に彼の隣に置いたのは、珈琲豆と赤いギターピックに赤い地に白でハイビスカスが描かれたアロハシャツ。
あたしの最後に隣に置いてくれるなら夏ならのうぜんかずら冬なら椿、と口にしていたあたしを彼は何を想い聞いていたのだろうか。
聞いていないようで聞いていてくれる。そのままを耳に入れてくれる。一緒にいて言葉選びに悩んだことがない相手だった。
大きな口を開け苺を頬張れば、苺が赫々とまぶしい命を教えてくれる。