水蜜
2025, Aug 19
水蜜の海に溺れている。
食べ頃だと想ったひとつに包丁を入れ種を抜き、端を引っ張ると皮はつぅっと剥けた。
現れたのは今にも崩れてしまいそうな果肉。余りにも瑞々しくやわらかでまな板の上で溶けてしまうかと想われた。
陸分の壱にした桃をふたつ、それぞれ小皿にのせ、どうぞ、と差し出す。残り陸分の肆は自分の皿へ。
大丈夫と訊かれるほど苺や栗も壱度にたくさん食べるほど好きだけれど、好きな果実を問われれば、口を突くのは・・・、桃。或の赤い色、或のあまい匂い、或の手にのせたときの感触。そして果敢無さ。
水蜜の海に溺れている。
ほんのひとときで消えると知っていても、全てを委ねるように躯を預けている。
夏が過ぎていく音が耳に入ってきた。