櫻色
2026, May 22
丁度いいバスの時間がなく、かと言いタクシー往復壱回分の料金に悩みたくなく、此の間買った雨合羽を着ていつもよりずっと早めに家を出た。それでも病院に着いたのは約束の伍分遅れだった。
病室を訪ねると、母の介護認定の調査は始まっていた。
花を育てるのが好きだった母に花の寫眞を撮って面会の都度見せていることや、其れに対し反応がいいことを話すと、調査員さんは母に好きな花を尋ねた。薔薇か藤とでも応えるのかと想っていたら、春だったら櫻が好き、とにこりと笑い応えていた。
事が終わり調査員さんに、嬉しそうな顔で笑いますね、可愛らしい、と言われ複雑な気持ちになる。
拾代になるとロックスターを好きになり(革の服はまだ無理だったので)デニムやTシャツを好んだあたしに、ピンクのシャツワンピースを買ってきた母を思い出す。
あたしの苦手な明るくはっきりした色を好む彼女。シャツワンピースのピンクはやわらかなピンクだったので嫌がらずに着ていたけれど、あれは櫻色でもあったなと振り返る。
雨合羽の上着は赤みの強いくすんだピンク。きれいに雨粒を弾いていた。