例えば秘密のノートに記すように。

cancion-de-la-abeja(みつばちのささやき)          

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大晦


 昨日高熱を出した母は今日はもう落ち着いていて、一緒に面会に行ってくれたいとこの顔を見ると笑い、帰り際またねと声も発していた。
 帰宅し明日からの為にフライパンで簡単な煮物と伊達巻をこしらえる。

 母が入院したことは良いことでもないが決して悪いことでもない。必然だったかと想う。
 叔母と叔父の勝手な面会のみが今年の悪かったことで、他に何もない。賃貸借契約をしていた相手のことは頭から消えてしまった。或の土地を彼が手にしても倖せにはなれないだろう。其れがわかったこともあるかもしれない。後始末に来年の確定申告が残っていて面倒に感じてはいるけれど。

 ハーゲンダッツのアイスクリームを食べつつ、そろそろ時間だろうかとテレビの前に座る。矢沢永吉さんの歌声にはしゃいだ後で今年を終わらせる。
 足さない。此の瞬間と想ったら潔く終わりにする。
 例え失敗しても、例え時間が殆ど残っていなくとも、失敗のままで終わらせないくらいには学んできたつもり。

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南天と蝋梅


 地元の物が売られている店を覗くと、バケツに入った花がみつかった。ねこやなぎもあったが、南天の実や蝋梅の花の束がありひとつづつ買ってみた。
 両手で抱えなければならないほどの大きな束を持ち帰り、縁側で花瓶に活ける大きさに剪定鋏を入れると、丁度花瓶ふたつに活けるに丁度いいとわかった。

 実感はないものの粛々とした気持ちで年越しをしようかとは想っている。
 ともだちの家にお邪魔する都度笑われる正座を今日もしつつ、腰が余りよくないので正座か胡坐でないと駄目なだけなのだけれどと想っては笑う。此れも自分の暮らしに合っている。
 華やかな花束もたくさん並んでいたけれど、自分の家には南天の実と蝋梅の花が似合っているとつくづく想った。

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 汚れと傷は全く別物で、汚れは表面に付着し最悪の場合内側を変えてしまったりもするが、傷は壱度付くと消えず表面上元通りになって見える浅い傷でさえ注意深く見ると傷がわかる。
 此処でも壱年間つきあってくれた机にありがとうと語り掛け頬を寄せてみると、想わぬ処に小さな傷ができていた。

 物言わぬ物たち、静物も生まれ無くなっていく。生涯が存在するのだと想う。彼らのような距離で相手と接すれば諍いも幾らか減るのではなかろうかなどと想うと、いとおしくなる。
 自分の内側と外側。外側、ましてや人に対し希望を抱くのは何か違う。異なる言葉で置き換えるなら、相手に求めている。此れが机なら、机に机以上の希望を抱くだろうか。自分の要求をするだろうか。保身に走り虚偽を働くだろうか。
 人は人をぞんざいに扱う。

 年末年始は机に花を飾ろうかと想ったが、壱日も休むことなくつきあうとわかっているので、たくさん撫でて終わりにした。

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雑巾掛け


 玄関を箒で履いていると、開けた戸から必ず風が入ってくる。
 ふと以前借家に住んでいたときのことを思い出す。玄関の床は亀がたそがれる場所だった。其の為床を雑巾掛けし、靴でもスリッパでも裸足でも大丈夫なようにしていた。
 今の床は半分はコンクリート、半分はコンクリートの上にマットを置いている。此れを雑巾掛けしたらどうだろうと拭いてみると、案外コンクリートもマットもすぐに乾き、埃も気にならなくなった。初めからこうすればよかった。

 雑巾掛けは疲れるけれど、いっとう好きな掃除かもしれない。手の力を借りた方がどんな掃除道具よりきれいになるような気がする。尤もそこまで汚れるまで放っておかなければ、さっと拭いて終わりになるのだけれど。
 大掛かりなことは苦手。簡単に済ませられることを毎日ちまちまするのが好き。今年も大掃除する気はなく、特に忙しくもなく過ごす暮れ。

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冬ごもり


 寒がりなくせに薄着。コートでなくコートのように見えるカーディガン。マフラーでなく大きなストール。ブーツのように見えるスニーカー。
 重い服は苦手。動きやすくない服も苦手。
 木綿の手袋はなかなか売られてなくひとつしか持っていないので、指が動かなくなった日にしかしない。
 年末年始は冬ごもりを決めている。
 コート要るのだろうか、とまた想っている。年が明けたら凍えそうだと文句を言いたぶん着ることになるのに。
 毎年毎年凝りもせず、年末年始に憂鬱になっては、雪の降る日と夏を想い描いて。

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