夜の繕い(窓)
2025, Apr 11
まだ夜も浅い時間。なんとなく録り溜めしてあったビデオを観る気になる。なんとなくアラン・ドロンが出演している映画に決める。観終えて、なんだできたじゃない、とつぶやく。最後に映画を観たのはいつだったかも憶えていない。
古い家。大きな窓のある家。夏向きの家は、廿窓にしようが家の中は夏まで冷えている。それだけに、夜の静けさも、傍で眠りに落ちかけている亀たちも、膝掛けもいとおしくなってくる。
傷が絶えず絆創膏を張る指。歪な爪。其の手で夜を撫でていく。
引き出しの奥にしまったままの裁縫道具箱。明日の夜は針と絲を出してみようか。越してきて、月が何処に昇るのか、星が何処に現れるのか、そう云うこともまだ知らずにいる。
夏の暑さに弐階の部屋が使えなくなる前に、呼吸を入れておきたく想う。
書架からそっと引き出したアンドリュー・ワイエスの画集を開く。カーテンの揺れるこちら側に何が置いてあるのだろう。其処に人物がいたならどんな姿をし、どんな表情をしているのだろう。
呼吸を入れたなら、弐階の或の南側のみっつ並んだ大きな窓をひとつづつ開き屋根に上り、暫し夜を眺めていたい。