記憶
2025, Dec 14
元は伯父のものではなかったかと想う合皮の黒いジャケットを羽織り、地図を見ながら朝の町を歩く。回覧板に入っていた公民館の清掃のお知らせに、どの公民館かと問いを入れたほどわかっていない。公民館に掃除道具は置いてあるだろうと想ったが、軍手の他に乾拭き用の雑巾をリュックサックに詰めてきた。
時間丁度に着くと、其処には班長さんがいた。此の辺掃いておいたが、あとはきれいになっているのですることはないんだよねぇ、と言う。もう壱軒いらっしゃたようだが既に人影はなく、せっかく来てもらったのに、自分は何もせずに、と笑って終了となった。
期日を憶えていたのはどうやら参軒。真面目だと言われてきたことを想う。そこには感心ばかりでなく揶揄もあったが、これで信用を得てきたのでいいではないか。
それほど人は記憶しないし、正確に記憶もしない。自分も記憶が抜け落ちてしまったことの方が圧倒的に多い。そして人は自分の都合のいいように記憶すると言うが、自分はそうでもない。会話を結構憶えている。御蔭で他人の整合性を疑ってしまったりもする。自分にはたかが半年前に過ぎないのだが、人により半年も経つと改竄と言えるほど事実と異なる記憶を口にする者もいた。
父や夫の記憶は自分と似ている。そう云う環境も大きかったと想う。
自分の都合よくでなく、あたしはできるだけあたしをそのまま憶えていたい。あなたのこともできればそのまま憶えていたい。