例えば秘密のノートに記すように。

cancion-de-la-abeja(みつばちのささやき)          

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夏椿


 今晩は胡瓜とわかめの酢の物。そこにしらすを添えよう。粉と豆と珈琲の袋をふたつ買い歩く道すがら、夏椿の花が開いているのをみつけた。
 やわらかそうな花びらと果敢なそうな白い色。そう云うものに惹かれてしまう。彼の骨に似ている。ふれてみたくなる衝動。けれど想うだけでふれはしない。

 夏椿。そう言って此の花をみつける都度笑ったあたしを、彼は憶えているかもしれない。
 夏椿。咲いていたの。冷蔵庫を開け取り出した鯛焼きに似せたアイスクリイムを咥え、彼の前に座る。
 其の後は黙ったままで座っている。いつもそうしていたように。

 静かな空間。蒸した空気。夏の匂いが少し混じるようになった。
 壊れそうで壊れない日傘を心配しながら、まだ袖を通していない麻のTシャツのことを考える。女性ものしかなかった。男性用があれば、彼も着ただろうか。
 薄い生地。白も壱枚買った。夏椿に似ているかな。袖を通したら彼に見せよう。きっと黙ってはいるけれど、笑うあたしを其の眼に映してくれるだろう。
 夏椿。弱々しく見えるのに凛として感じられる。

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