夏椿
2024, May 31
今晩は胡瓜とわかめの酢の物。そこにしらすを添えよう。粉と豆と珈琲の袋をふたつ買い歩く道すがら、夏椿の花が開いているのをみつけた。
やわらかそうな花びらと果敢なそうな白い色。そう云うものに惹かれてしまう。彼の骨に似ている。ふれてみたくなる衝動。けれど想うだけでふれはしない。
夏椿。そう言って此の花をみつける都度笑ったあたしを、彼は憶えているかもしれない。
夏椿。咲いていたの。冷蔵庫を開け取り出した鯛焼きに似せたアイスクリイムを咥え、彼の前に座る。
其の後は黙ったままで座っている。いつもそうしていたように。
静かな空間。蒸した空気。夏の匂いが少し混じるようになった。
壊れそうで壊れない日傘を心配しながら、まだ袖を通していない麻のTシャツのことを考える。女性ものしかなかった。男性用があれば、彼も着ただろうか。
薄い生地。白も壱枚買った。夏椿に似ているかな。袖を通したら彼に見せよう。きっと黙ってはいるけれど、笑うあたしを其の眼に映してくれるだろう。
夏椿。弱々しく見えるのに凛として感じられる。