地盤
2024, Sep 02
雨が小雨になり捌時過ぎに家を出る。
バスの窓から覗いた川は今にも溢れそうなほど水位が上がっていた。高い土手が崩れさえしなければ町に流れ込むことはないだろうと想っていたけれど、壱度土手すれすれにまで水位が上がった川を見て以来気が気でなくなった。
バスを降りいつもの小径を抜けようとすると大きな水溜りができていて迂回する。雨は落ち着いていて、歩けるので助かったと想った。
ざわざわとした胸は母の家に入り和室を目にすると静かになった。
うす紅色が入っているとわからないほど壁紙は白かった。押し入れの襖は半分透明なアクリル板が入った樹木の戸に替わり、部屋全体が明るくなっていた。
壁の中央に入った柱の色がより美しく見え、だから昔の家って好きなの、と母に笑いかけ、今の家って壁の中央に柱なんてないよね、と続けると、此の家もそっちは鉄骨が入っているからないけれどね、と言った後で母は声を落とした。
近所に建設中の家をあれは今に・・・と言っていた父のこと、地盤も悪かった為か其の家がなんと建設中に倒れてしまったこと。知らなかった話を聞かされ神経質な、よく言えば慎重な父に、ありがとうとつぶやく。
明日どうなるかはわからない。母の家が無くなってしまうことだってあり得る。それでも此の時点で薔薇色だと言える。あたしには父が築いてくれた地盤がある。