例えば秘密のノートに記すように。

cancion-de-la-abeja(みつばちのささやき)          

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冬ごもり


 寒がりなくせに薄着。コートでなくコートのように見えるカーディガン。マフラーでなく大きなストール。ブーツのように見えるスニーカー。
 重い服は苦手。動きやすくない服も苦手。
 木綿の手袋はなかなか売られてなくひとつしか持っていないので、指が動かなくなった日にしかしない。
 年末年始は冬ごもりを決めている。
 コート要るのだろうか、とまた想っている。年が明けたら凍えそうだと文句を言いたぶん着ることになるのに。
 毎年毎年凝りもせず、年末年始に憂鬱になっては、雪の降る日と夏を想い描いて。

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始まり


 暦を貰っても年が終わる実感がなく、銀行はまだ開いているのだろうか、あそこの店はいつまでの営業だろうか、と想っても、想った傍から忘れていく。
 壱昨年より去年、去年より今年、壱年毎壱年を長く感じるようになっている。
 ねこやなぎをみつけたら今年も買ってこようかなと想ったけれど、またすぐに忘れてしまうのだろう。

 以前は何を何処で区切っていたのだろう。どうして区切ることをしていたのだろう。
 正月もだいぶ過ぎた頃、毎年彼と神社へ行っていた。或の長い参道。いい年になるようにとそれだけをひたすら想っていた。

 自分が消えるまで終わらない願い、終わりのない願い。どうやって始まったのだろう。
 胸に開いた風穴。今日の強風さえ通り抜けていくことなく、あたしの疑問だけがちょこんと座っている。

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贈り物


 感情のみで生きているなら、想うことは死にたいでしかない。思考を巡らせ生きるなら、あの人のように彼のように生きることに誠実でありたいと。生活を成り立たせる最低限のことをしつつ、ひとつでもふたつでも其処に何か足せたらと想い暮らしている。
 ツリーなんて飾ってみたり、編み物なんてしてみたり、・・・。今日発売のウンベルト・エーコの「薔薇の名前」は現時点で文庫化の予定はないそうで残念だとか(映画で観ておもしろかったけれど上下巻で凡そ陸千圓の値)、ジョニー・デップが「モディリアーニ」の映画を撮ったとか、来年「アンドリュー・ワイエス展」が開催されるとか、矢沢永吉さんが出ると聞いたので「紅白」を見てみようかとか、・・・そんなことに照らされて此の日々にいる。
 日暮れから就寝まで灯していたツリーにくちづけて、自身に贈り物をした。今朝出ていた深い霧のような贈り物を。

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きらきら


 雨が降り続く中、ケーキを買いに行く。
 町の中は静かで飾り付けもなく、ケーキ屋の扉を開けるまでクリスマスを疑うほどだった。どれだけ今まで華やかな街に住んでいたかを想う。借家の周りこそ静かだったが、大通りを渡り駅へ向かうとクリスマスの頃はイルミネーションや大きなツリーが飾られ、クリスマスマーケットも現れた。何体ものテディベアが飾られたハウスがあり、其処は出入りが自由でベンチがひとつありベンチに置かれた大きなテディベアを抱くのも寫眞を撮るのも自由だった。其れをあたしは東京の街のようにきらびやかではないけれど、徒歩で行けるしこんなのもいいよねと想っていた。
 雨は雪にならず、夕食にケーキだけ食べた。卓の上にツリーを置き彼に苺のショートケーキを自分に桃のショートケーキをとりわける。ワインもチーズもフィル・スペクターの音楽もない。なのに、きらきらしている。
 質素だからか余計にツリーに飾ったボウルやあちこちに置いた乾燥花や小物がきらきらして見える。硝子でできた小さな天使と青い鳥に目を向けると、「平和な街も闘っている街もメリーメリークリスマス」と佐野元春の歌が聴こえてきた。

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灯り


 面会から帰宅しポトフとアボカドサラダをこしらえ、クリスマスツリーの電球を灯して食べる。
 電飾は白だとばかり想っていた。白はかめ覗き色にも見えるし、星形の電飾は白でなく薄いきいろに光っている。
 わかりきっていることでも嬉しければ、想わぬことも嬉しい。そこにあたしの声が響く。彼の声が聞こえる。

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