例えば秘密のノートに記すように。

cancion-de-la-abeja(みつばちのささやき)          

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卵を食べる


 赤い卵。そう言って殻が赤くも茶色にも見える卵を籠に入れる。

 フライパンに拡がったのはバターの匂い。溶かした卵を流しこみ菜箸で手早く集めたら火を落とし少し崩して皿に盛る。
 茹で卵も出汁巻き卵も好きだけれど、いっとう好きなのはスクランブルエッグかオムレツ。
 どちらかと云うと硬い食感が好みなのに、卵はふわふわでとろとろしたものを食べたい。
 壱年も弐年も目玉焼きを食べていないことを想うけれど、また卵を手にした途端に忘れてしまうのだろう。

 祖母の家にあった小さな鶏小屋を思い出し、たまには生卵かけご飯を食べてみようかなどと想ったり。
 卵を食べる日は割と元気な日。バスとどちらにしようか迷ったけれど、自転車にまたがる。

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黄水仙、白水仙


 白梅も蠟梅も咲き続けてはいるが、半分ほど花を落とし淋しくなってきた。まとめて背の高い花瓶に活け、父の傍に置く。新たに買ってきたのはかすみ草と黄と白の水仙の花束。其れを背の低い花瓶に活け、彼に、どう?、と言い傍に置く。
 数日前買ってきた線香も水仙の香。
 彼と遊びに行った水車のある公園に咲いていたいた水仙を思い出す。
 明日は立春。移ろう陽射し。冬の終わりの匂いが部屋に拡がっている。

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月と星


 月がどっちの方向に昇るのかわからない。
 夕刻家の周りを歩くが、月はどの方角にも見えなかった。
 胸からRCサクセションの「エンジェル」があふれそうで、歩道橋まで行くのはやめてしまった。
 ひとつだけ見えた星が今日のともだち。家に入るまでずっと頭上で光っていてくれた。

 拾回の内、陸、漆回は壱度で目的地に辿り着けたことのないような自分。そして、道すがら必ず何かを拾う。其れはどれも素敵で・・・。運がいいのか悪いのかよくわからない。
 彼と一緒だと大抵回り道になったけれど、其れも愉しかった。思いがけず拾うものが自分は好きなのだなとつくづく想う。

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時計の狂い


 公園を抜けると佰メートル先を走っていくバスがあった。始発の停留所でもあり早発は有り得ないともう壱度腕時計を見る。発車時刻まで参分はあり呆然とした後、歩き出す。
 同じ路線のバスは弐時間、異なる路線のバスは伍拾分待ちとなる。風もなく陽射しがあり暖かな午后、散歩を続けるのも悪くない。

 丗分も歩いた頃気持ちが落ち着くと、腕時計が遅れていることが判った。
 弐、参分進んでいたのにいつのまに遅れたのだろう。確か弐、参年くらい電池は持つ筈なのに。

 散歩したことにより、こちらから病院までのバスの道程と病院からこちらまでのバスの道程と停留所と停留所のだいたいの距離が摑めた。予期せぬ出来事が起こっても、なんとかなりそう。
 遅れた時計。大好きなリトルミイからの贈り物だと彼女が描かれた腕時計を頬に当て、途中の停留所で次のバスを待った。

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布団の中を覗いても


 何度も何度も想ってしまうのは仕方のないことだろう。

 布団の中へ猫が入っていく。透けた躯が旅立った者なことを教えている。ちょっと大きな猫。薄く茶色がかった毛並み。あのこかもしれないと想う。
 小さな子供だった自分にとりあのこはともだちであり姉でもあった。ごめんねとありがとうの想い。
 今でも心配してついていてくれるのだろうか。口を突いて出るのはごめんね。・・・とありがとう。

 布団の中を覗いても猫の姿はなかった。手を入れても感触は得られなかった。束の間のできごと。幻を見ていたのだろうか。ただ布団の中は妙に温かく、不思議だと想うばかり。

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