例えば秘密のノートに記すように。

       cancion-de-la-abeja(みつばちのささやき)          

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時間の使い方


 羊の毛そのものの色の毛絲を選ぶと概ね白に灰に茶になり、ならばと異なる毛絲の中から好きな黒を探しても(初心者用の価格の限られた中でのこともあり)いい黒がみつからず、たまには選んだことない色でもと選んだのが檸檬に近いきいろだった。壱度カーディガンになったものの大きく作り過ぎてしまい、ぬくさが余り感じられなかった。編み直そうか迷っていたけれど、梅雨寒の気温に此れもと始めたのが弐週間前だった。
 今度は躯にあったカーディガンができあがり、数えてみると今年になり編み直しも含め伍枚も編んでいて、帰省の時間に手紙を書く時間に美術館や画廊やライブに出掛ける時間に散歩がてら寫眞を撮る時間に・・・、と今までしていたことができなくなった時間と云う時間を全て編み物に当ててしまっていたことに気付いた。手紙は送っても大丈夫だろうかと時折便箋を机の上に置いてみるのだけれど、壱時間もしないうち咳が出てくるので、手紙を書くのをやめてしまう。(もしもの場合は、と壱度マスクをし手紙を書いたけれど、必要に迫られた手紙ならまだしもともだちに送る手紙は書けたものでないと想う。)
 満遍なく振り分けるか昼寝に時間を当てようか、時間の使い方を考えようと枡目の入ったレポート用紙を机に置き指で鉛筆を廻していると運悪く藍色の毛絲が眼に入ってしまった。
 此の家は涼しい。然もあたしの部屋(寝室にしている和室の壱角)ときたら他の部屋より更に気温が弐度低い。冬を想い藍色の毛絲を掴むと、暑苦しさはなくやわらかな感触を覚えただけだった。今しがた、熱中症に気をつけて、と町のスピーカーが注意を促していたと云うのに。レポート用紙は片付けられ机には編み物の本が乗ってしまった。

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