例えば秘密のノートに記すように。

       cancion-de-la-abeja(みつばちのささやき)          

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手縫いの


 参日前夜中に咳込み、翌朝近所の医院に予約を入れた。診断は風邪の悪化だったけれど、時期が時期なのでレントゲンを撮られ血液検査をされた。説明された検査の結果は、炎症を起こしているので数値が幾らか上がっているものがあるもののコロナに掛かると此れが必ず上がると云う特徴的なものに変化は見られず・・・、と云うものだった。肆千伍佰圓の支払いをし、映画で観るような近未来の世界にも似た受付の向こう側にいる数人の彼女たちに弐度会釈をし医院を出た。処方されたのはいつもの薬と抗生物質だった。
 薬を飲み弐日、昼間の咳はだいぶなくなり夜中の咳込みも幾らか落ち着いてきた。今夜は少し眠れるかもしれない。咳が出ているうちは買い物にも行けない。腹が多少ゆるくなるのは今回出された抗生物質に因るものだろうか。廿肆時間マスクを付けているのがちょっと辛いなと想っていると、ともだちから来た手紙に手作りのマスクが弐枚添えられていた。うさぎ柄のガーゼのマスクは肌の負担を減らす為だとゴムを入れる縫い代が表面に作られていた。丁度いい時にと喜び繁々眺めているうち、其れが手縫いだと判った。ガーゼも重ねるとなかなか針が通らなくなる。
 此の間参度目の夢を見たライブの延期が決まり、わかっていても少し泣いてしまった。ツイッターでできるのかとか延期の期日が判る前に払い戻し期間がとか眼にしたとき、あたしが思い出したのは「ジャニス」の映画だった。余計なことを其れも然も自分が人の良いような言葉をジャニスに掛ける女に腸が煮え繰り返った。何年も経っているのに荻窪の映画館で覚えた感情は未だに黴臭くならない。尤も今は或のときの感情は一瞬覚えるだけで、あとは深い溜息を放てば終える。
 ストレス溜めてない?体調は?と気遣ってくれるともだちの手紙に、彼女自身の不安が垣間見える気がしないでもなかった。あなたに少しでも笑って貰うにはどうすればいいだろう。あたしはまた甲斐バンドの「嵐の季節」を聴き、ストーンズの「無情の世界」も聴いた。

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